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病理診断科について

病理とは?

  医学における病理学は、病気の本態を明らかにし、病変の成り立ちや原因を研究する基礎的学問です。病理学は臨床医学の大きな基盤を作ってきました。医学のなかでも古い学問で古代ギリシャのヒポクラテスに端を発すると言われています。
 それ故、病理学は大学などの大きな研究機関の基礎部門の一つとして多くの業績を挙げてきました。病理学にはもっぱら基礎的研究を専門とする基礎病理学と臨床と直結した臨床病理学があります。欧米諸国ではかなり以前から臨床病理学と基礎病理学に分かれ、臨床病理学は極めて自然に診療体系に組み込まれてきました。
 アメリカでは50年以上前から臨床病理の専門医制度が制定され、診療科の一つとして発展してきました。アメリカでは多くの病院に病理診断を担当する病理医がいます。欧米では一般の人々も病理診断科の存在、仕事の役割を知っています。日本では医学生ですら一般の病院における臨床病理のことを知らない学生もいます。患者さんが知らないのが当たり前です。
 一般の人が知らない科でありますが、病院に病理診断科があると大きなメリットがあります。 

病理診断科があるメリットは?

 病理診断科がある病院は限られています。病理診断科がなければ診療が進まないわけではありませんが、病理診断科があると次のようなメリットがあります。

病理診断を基にしたより正確な臨床診断を確定できます。

 病理診断はどの病院でも行われています。但し、常勤病理医がいないところでは検査センターなどに依頼して病理診断をしてもらい、その報告書を受け取ります。しかし、病理医と臨床医が密に連絡を取ることは難しく、時には意志の疎通が出来ません。

 当院では病理医と臨床医が密な連絡を取り合い、より正確な臨床診断が可能になっています。たとえば、開業の先生から胃癌の疑いとして紹介された患者さんが何度も病理組織の検査を行い、ひどい胃炎であることが分かり、最終的には手術をしないで、内服治療で良くなりました。「疑わしきは罰せず」です。

手術中に迅速診断が随時行われ、過剰な手術が避けられます。

 迅速診断とは手術中に非常に短時間に病理組織診断をする特殊な検査です。たとえば、臨床的には癌の確率が非常に高くとも、治療前に100%の診断が出来ない場合があります。その時は手術時に組織診断を行って、100%の診断の元に手術が行われます。

 もし、癌の疑いで手術しても、癌でなければ最小限の手術に留められます。乳癌と誤診された場合には乳房が取られてしまい、取り返しのつかないことになります。必ず組織診断の確認の元に乳房切断が行われます。

手術で取り出された臓器の詳細な検討をしています。

 病気の種類、病気の程度では詳細な組織検討がなされます。病理診断の保険料は低いので、検査センターなどではたくさんの組織を調べることが難しい場合があります。当院では、問題症例は数多くの組織を調べて報告しています。たとえば、乳癌で部分切除された乳房の一部は細かく調べて、癌の広がり、大きさを図で示し(病変の地図化)、患者さんにより具体的な治療方針の提示をしています。

病理解剖を随時行えます。

 入院治療の甲斐なく亡くなった患者さんの病気の原因を究明できます。当院でも最新の治療、最大の努力をして治療に当たっていますが、原因がはっきりしないまま亡くなる患者さんがたくさんいます。病理解剖をすると100%原因が分かるわけではありませんが、中には全く予想も出来なかった病気を発見することもたくさんあります。原因不明のまま、亡くなってしまえば将来的には医療側も遺族側も納得できません。

臨床医と病理医の間で臨床病理検討会が開かれ、医療の質を絶えずチェックできます。

 臨床医は正確な臨床診断、最良の治療をしようと日夜努力していますが、なかなか最終診断を踏まえた診断、治療の評価が出来ません。検討会では診断の正しさ、時には不備、治療の成果、時には失敗を顧みるために臨床医と病理医がお互いに検討し、今後の医療にフィードバックさせています。

医学研鑽の手助けをできます。

 難しい症例、珍しい症例、治療経験、時には失敗は他の施設の医療従事者に知らせて、知識の共有を図らなければなりません。研究会や学会での発表は医療従事者の大きな使命です。また、研究会や学会での発表された事を論文としてまとめ、印刷物の形で報告するのも大きな使命です。医療従事者が研究会、学会等で発表する手助けをし、より学問的な重要性を高めています。

 もちろんこれらの仕事は必ずしも病理医がいなくとも出来ますが、常勤病理医がいることで忙しい診療の中でより可能になり、それが質の高い医療へと繋がると自負しています。