第9回 生化学検査~脂質・血糖の検査について~
今回は健診などでもよく検査される、脂質と血糖の検査について簡単に紹介します。
脂質の検査
脂質検査には、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール
、中性脂肪 の検査があります。総コレステロール(T-CHO)
総コレステロールは、血液中に含まれるすべてのコレステロールを測定したものです。コレステロールは、胆汁酸
やホルモンの原料となるほかに、細胞膜の構成成分としても利用されています。コレステロールは女性ホルモンと
関係があり、閉経後の女性は総コレステロール値が高くなる傾向があります。妊娠や経口避妊薬の服用によって
も高値になります。
基準値:150~220mg/dL
LDLコレステロール(LDL-CHO)
LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ働きがあります。LDLコレステロールが増え過
ぎると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などを起こす危険性が高くなるため、「悪玉コレステロール」とも呼ばれ
ています。LDLコレステロール値が高いほど動脈硬化が発生しやすく、10mg/dL増加することによって、心筋梗塞
発症のリスクが10~15%増加するともいわれています。特に閉経後の女性は数値が高くなる傾向があります。
基準値:70~140mg/dL
HDLコレステロール(HDL-CHO)
HDLコレステロールは、余分なコレステロールや血管壁に付着しているコレステロールを回収して肝臓へ戻す働き
があるため、「善玉コレステロール」とも呼ばれています。HDLコレステロール値の低い人は、心筋梗塞や脳梗塞な
ど、動脈硬化がもたらす病気が起こりやすい傾向があります。運動不足、喫煙などは低下の原因となります。
基準値:40~80mg/dL
中性脂肪(TG)
中性脂肪は、主に体内のエネルギー源として利用され、余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。食
事との関係が深く、食べ過ぎ・飲み過ぎなどによるエネルギーのとり過ぎや、運動不足などが中性脂肪値を上げる
原因となります。中性脂肪が増え過ぎると動脈硬化が発生しやすくなります。食後に検査をすると、検査値が高くな
るので、少なくとも検査の12時間前から絶食することが望まれます。
基準値:50~150mg/dL
総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪
の値が基準値以上の場合や、HDLコレステロール値が基準値以下の場合は脂質異常症* の疑いがあります。
*脂質異常症
動脈硬化の一因となり、放っておくと狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な病気を引き起こします。自覚症状
がなく、多くは健康診断などの血液検査でみつかります。脂質異常症の原因として、高カロリーで高脂肪な食事、
肥満、運動不足などがあげられます。食事や運動など生活習慣を改善することが大切です。
血糖の検査
血糖(Glu)
血糖は、血液中に含まれるブドウ糖のことです。血糖値は食後上昇し、時間の経過とともに低下します。こうした血
糖値の変動は通常、ある一定の範囲内に収まっていますが、糖尿病予備群や糖尿病患者の場合は一定の範囲を
超えてしまいます。血糖値は糖尿病の発見と診断に重要な検査の1つです。空腹時の血糖値を検査する場合は、
検査前日の夜から飲食を控え、翌日の朝に採血します。
基準値:60~110mg/dL(空腹時)
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
HbA1cは、血液中の赤血球の中にあるHb(ヘモグロビン)にブドウ糖が結合したものです。一度結合すると、赤血
球の寿命(約120日)がつきるまでそのまま血液中に存在するため、血液中のHbA1cを測定することで過去1~2ヶ
月から現在までの血糖値の平均の状態を知ることができます。また、血糖値の高い状態が長く続くことによって、
HbA1cの値は高くなります。そのため、HbA1c は糖尿病の確定診断の指標となり、また経過をみるのに役立ちま
す。
基準値:4.6~6.2%(NGSP)
血糖、HbA1cの両方が高値の場合は、糖尿病と診断されます。
(詳しくは 豆知識 第2回 糖尿病 をご覧ください。)