第10回 動脈硬化のはなし
動脈硬化は早期発見が大切!
健康な血管 動脈硬化が進行した血管
動脈硬化とは、動脈にコレステロールや中性脂肪などがたまることで壁が厚くなったり、硬くなったりして弾力性
や柔軟性を失った状態のことをいいます。
動脈硬化が進行すると、血液をうまく送り出すことができなくなってしまい、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)
や脳梗塞などの臓器障害を引き起こします。これらの臓器障害は日本人の死因の約3割を占めています。
動脈硬化の危険因子
・高血圧
・高血糖
・脂質異常
・喫煙
・過度の飲酒
・肥満
・ストレス
このような危険因子が存在すると血管に変化が起こり、動脈硬化が進行します。
メタボの人は要注意!!
内臓脂肪型肥満に加え、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つをあわせもった状態をメタボリックシ
ンドロームといいます。メタボリックシンドロームの人は、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞を引き起こす可能性が
非常に高く、日々の生活習慣が大きく影響するため、生活習慣の改善が望まれます。
動脈硬化を原因として発症する主な病気と症状
血管の部位 | 病名 | 自覚症状 |
---|---|---|
脳 | 脳梗塞、脳出血 | 手のしびれや麻痺、めまい、ろれつがまわらない |
心臓 | 狭心症、心筋梗塞 | 運動時、時に安静時の胸の圧迫感・痛み |
腎臓 | 腎硬化症 | 血圧の上昇 |
下肢 | 閉塞性動脈硬化症 | 歩行時の下肢の痛み・冷たさ |
大動脈 | 大動脈瘤、大動脈解離 | 突然の胸や腹部、背部の痛み |
動脈硬化の検査法
・血圧測定
・ABI/baPWV(足関節上腕血圧比/脈波伝播速度)
・血液検査(コレステロール値、中性脂肪値、血糖値など)
・超音波検査やCT・MRIなどの画像検査
今回はABI検査について紹介します。この検査は、ABI(足関節上腕血圧比)とbaPWV(脈波伝播速度)と
いう指標を使って動脈硬化の程度を調べる検査です。
ABI/baPWVでわかること
ABIでは血管のつまり具合、baPWVでは血管のしなやかさがわかります。
[ABI]
ABI検査は、足首と上腕の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算したもので、
血管のつまり具合を推定します。
足首の血圧を測定すると、健康な人では腕の血圧と同じくらい、あるいは少し高い値となります。しかし足の
動脈がつまっているとその部分の血圧が低下します。ABI値が0.9未満であると血管がつまっている可能性が高く、
その値が低いほど重症になります。また、ABI値が1.4以上の高値である場合は血管が硬くなり、低値の場合と同
様に動脈硬化が疑われます。
[baPWV]
心臓から押し出された血液により生じた拍動が、血管を通じて手や足に届くまでの速度を測ることでbaPWVが
わかります。硬いものは振動が速く伝わり、柔らかいものは遅く伝わることを原理としています。
血管は年齢とともに硬さを増していきます。血管のしなやかさが失われると、baPWVが高くなります。
計測されたbaPWVから推定血管年齢を算出することもできます。
ABI/baPWVの検査方法
仰向けに寝ていただき、安静状態で両腕・両足首の4か所の血圧と脈波を同時に測定するだけで痛みはなく、
血圧測定のような感覚で検査を受けることができます。検査時間は5~10分程です。
動脈硬化を予防し、血管を若く保つためには
運動療法と食事療法とがあります。
・運動療法
日常生活の中でできる運動(歩く、自転車に乗る、階段の昇り降り、重い荷物を運ぶ)から始めましょう。
・食事療法
食べ過ぎに注意し、主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を心がけ、油分を控えて緑黄色野菜を
積極的に摂るようにしましょう。水分はこまめにとるようにし、アルコールは控えめにしましょう。