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第11回 生化学検査 ~肝機能の検査について~

       今回は、肝臓の働きと肝臓の機能の指標となる検査項目について簡単に紹介します。

肝臓の働き

 

代謝の中枢

     肝臓には、胃腸で吸収された栄養素が血液によって運ばれます。これらの栄養素は、肝臓で代謝され、体内で活

           用できる形に分解・再合成されます。例えば、血中のブドウ糖は、グリコーゲンという形で肝臓に蓄えられ、血糖値

           のコントロールに関わっています。また、肝臓ではコレステロールなどの脂質の合成やアルブミンなどの血漿タン

           パク質の大部分の合成も行われています。

解毒作用

     肝臓は、有害な物質を無害な物質に変える役割を担っています。飲酒により増加する血中エタノールは、大脳皮

     質や小脳、中枢神経系などに影響し、感情的な行動、運動失調、呼吸抑制などが生じます。肝臓は、エタノール

     をアセトアルデヒドに変えることにより身体を守っています。また、食物に含まれるタンパク質が腸内で分解される

     時などに中枢神経毒となるアンモニアが生じます。肝臓では、発生した有害なアンモニアを尿素という無害な物質

     に変えています。

 

胆汁の生成

     胆汁は、脂肪の消化に重要な液体で、肝臓で生成されます。主な成分として、胆汁酸やコレステロール、胆汁色

     素があります。生成された胆汁は、胆嚢に蓄えられ、食事の際に食物中の脂肪の刺激により十二指腸に分泌さ

     れます。胆汁の中に含まれる胆汁酸が、脂肪の消化・吸収を助けています。 

                 

当院で行っている主な肝機能の検査
 

 

   AST

     肝臓が障害された際に血中に出る酵素の1つで、急性の肝障害時に急激な上昇がみられます。代表的な疾患とし

     てウイルス性急性肝炎やアルコール性肝炎が挙げられます。ただし、ASTは肝臓以外にも心臓や筋肉に多く含ま

     れるため、心筋梗塞や筋ジストロフィなどの疾患でも高値となります。

      基準値:8~35 U/L

   ALT

     ASTと同様、肝臓が障害された際に血中に出る酵素の1つで、急性の肝障害時に急激な上昇がみられます。ALT

     は、肝臓にのみ多く含まれているため、ALTが高いときはほとんど肝障害によるものと考えることができます。代表

     的な疾患は、ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎が挙げられます。

              基準値:4~30 U/L

   γ-GT

            腎臓や肝臓に存在する酵素ですが、検査対象となる血清中のγ-GTはほとんど肝臓に由来するものなので、肝

            機能の指標となります。アルコール摂取量と関係があり、摂取量が多い人は値が上昇し、摂取量を減らすと低下

             します。 また、閉塞性黄疸や肝癌でも高値となります。      

       基準値:10~65 U/L

   LDH

     全身に存在する酵素ですが、骨格筋や肝臓、心臓などに多く分布しています。よって、LDHの上昇はいずれかの

           組織に損傷があることを示します。急性肝炎や劇症肝炎、肝癌で高値となります。また、筋ジストロフィや急性心

           筋梗塞でも高値となります。

      基準値:106~211 U/L

   ALP

           全身に存在する酵素ですが、胆汁の通り道となる肝臓の毛細胆管、腎臓の近位尿細管、骨の骨芽細胞などに多

     く存在する酵素です。検査対象となる血清中では、肝臓と骨由来のALPが主となるため、胆汁うっ滞を起こす疾患

     や骨形成の疾患において高値となります。代表的な疾患として、閉塞性黄疸や副甲状腺機能亢進症が挙げられま

     す。

      基準値:104~338 U/L

   ChE

     肝臓や皮膚、心臓、膵臓などに分布している酵素ですが、検査対象となる血清中のChEは、ほとんど肝臓由来の

           ため肝機能の指標となります。また、ChEは肝臓での蛋白合成能に依存しているため、栄養状態の指標にもなり

           ます。肝硬変や慢性肝炎では低値となり、脂肪肝では高値となります。

      基準値:男性 230~470 U/L

                         女性 200~450 U/L

   T-CHO(総コレステロール)

     肝臓は、コレステロール合成の主要な臓器です。そのため肝臓に障害が起こると、肝臓でのコレステロール合成

     機能が低下し、血中のコレステロールが低下します。その結果、血清T-CHOは低値となります。また、悪玉コレス

     テロールといわれるLDL-C(LDLコレステロール)や、善玉コレステロールといわれるHDL-C(HDLコレステロール)

     も低値となります。代表的な疾患として、慢性肝炎、劇症肝炎、肝硬変が挙げられます。

      基準値:150~220 mg/dL

   ALB(アルブミン)

     ALBは、体内で栄養源となるタンパク質で、肝臓で合成されており、成人で1日あたり約10 g合成されています。

     劇症肝炎や肝硬変、肝癌では、肝臓での合成が低下するため、血清アルブミンが減少します。また、飢餓や栄養

     失調でも摂取不足により、血清アルブミンが減少します。      

      基準値:3.8~5.2 g/dL

   T-BiL(総ビリルビン)

     ビリルビンは赤血球中のヘモグロビンが代謝され生じる色素で、アルブミンと結合し血流にのって肝臓へ運ばれ

     ます。運ばれたビリルビンは、肝臓にて脂溶性のビリルビン(間接ビリルビン)から水溶性のビリルビン(直接ビリ

     ルビン)に変えられ、胆汁中へ排泄されます。そのため肝臓や胆道に障害が起こると、胆汁中への直接ビリルビ

     ンの排泄障害が起き、血中のビリルビン濃度が上昇し、血清T-BiLが高値となります。代表的な疾患は、急性肝

     炎や慢性肝炎、肝硬変、閉塞性黄疸が挙げられます。

      基準値:0.2~1.2 mg/dL

   ICGテスト(インドシアニングリーン試験)

     肝臓の異物排泄機能を調べる検査です。インドシアニングリーンと呼ばれる色素は、血液中のアルブミンと結合

     し、90%以上が肝臓に取り込まれ、胆汁中に排泄されます。この検査では、ICGを注射し15分後もしくは5分、10分、

     15分後に採血を行い、血液中のインドシアニングリーンの血中濃度を測定することで、肝機能の評価を行います。

     15分値が高いと、肝臓の排泄機能が低下しているという指標となります。

      基準値: 15分停滞率 0.0~10.0 %