第12回 深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PE)
どんな病気か?
通常、血管内では血液が固まらないように調整されていますが、様々な 要因で血流が滞ると、血管内に「血栓」
と呼ばれる血液の塊ができます。
「深部静脈血栓症(DVT)」とは、主に下肢の静脈内に血栓ができた状態を言います。
この下肢にできた血栓は、血液の流れに乗って血管内を移動し、肺の血管を詰まらせてしまうことがあります。
これを「肺血栓塞栓症(PE)」と呼びます。
DVTとPEは深く関係した病気であり、一般に「エコノミークラス症候群」として知られています。
原因
血栓ができやすくなる原因として以下のような事が挙げられます。
・寝たきりや長時間座ったままの状態、運動不足
・手術や骨折で血管が傷ついた場合
・妊娠や薬物による影響
・脱水によって血液がドロドロになった状態
症状
深部静脈血栓症(DVT)になると ・・・
足の痛み、腫れ、発赤 etc… 自覚症状が無い場合も少なくありません。
肺血栓塞栓症(PE)になると ・・・
呼吸困難、胸の痛み、冷汗 etc… 重症の場合は心肺停止になることもあります。
検査
血栓の有無を調べるために色々な検査が行われています。
・血液検査 ⇒ 血栓が存在すると、Dダイマーという項目が上昇します。
・超音波検査、CT ⇒ 足の血管や肺の血管に血栓がないか調べます。
<超音波検査:下肢血管内の血栓> <CT:肺血管内の血栓>
治療
点滴や内服薬によって血液をサラサラにする、抗凝固療法や血栓溶解療法と言われる治療があります。
代表的な内服薬としてワーファリンが挙げられます。
また、下肢にできてしまった血栓が肺に行かないように、血管内にフィルターを置いたり、 カテーテルなどで
血栓を直接取り除く場合もあります。
予防
日頃から、適度な運動と水分補給を心掛けましょう。長時間同じ姿勢でいる時は、定期的に足や身体を動かす
ことも大切です。
また、弾性ストッキングと呼ばれる医療用ストッキングも効果的です。 静脈内の血液の流れを良くし、血栓を
予防する効果があります。
<弾性ストッキング>
ちなみに…】
東日本大震災や熊本地震では車中泊によるDVT・PEの発症が大きな問題となりました。
車中泊で長時間座ったままの状態が続いたことに加え、水不足による脱水、ストレスが重なったことが原因と
考えられています。全国各地から派遣された医療チームが被災地で超音波検査を行うなど、多岐にわたって
活躍しました。
<超音波検査の様子>