第13回 食中毒の原因とは?
食中毒とは?
食中毒とは、食中毒を起こす細菌やウイルスなどが付着した食べ物を食べることで引き起こされる病気です。
今回は、その原因の1つのキャンピロバクターという細菌を紹介します。
キャンピロバクターとは?
キャンピロバクターとは、一般に動物の腸管に生息する細菌です。
この細菌は、特徴的ならせん状をしており、また、酸素が少しある程度の環境を好みます(微好気性)。
ヒトに感染することで、感染性腸炎の原因菌となります。
原因となるのは主にCampylobacter jejuniという細菌です。
時期としては5~7・10月にピークがみられますが、年間を通して発生しており、細菌性食中毒の多くを
占めています。
症状は、発熱、頭痛、腹痛、嘔吐などがあり、その数時間後~2日後に下痢症状を引き起こします。
便は、腐敗臭のする水溶性下痢で、時に血が混じることもあります。
他の感染型細菌性食中毒と比較し、症状に差はあまり見られませんが、潜伏期間が2~7日間とやや長いことが
特徴です。
これは、キャンピロバクターをグラム染色法で染めたものを、顕微鏡(×1000)で観察したものです。
らせん状に赤く染まって見えているのがキャンピロバクターです。
診断方法について
キャンピロバクターによる感染症と診断するには、臨床症状からは特定困難であり、便から菌を検出することが
最も確実とされています。
この微生物を発育させるためには、微好気条件下で最低2日間を要するため、診断には通常3~5日間必要となり
ます。
治療について
軽い症状であれば、1週間程度で自然に回復することが多いですが、症状によっては整腸剤や抗菌薬などが
処方されることもあります。
下痢や発熱による脱水症状を引き起こすこともあるので、治療と同時に脱水予防も必要となってきます。
また、自己判断で下痢止めを服用してしまうと、腸内に細菌を閉じ込めてしまうことになるので注意が必要です。
また、まれにキャンピロバクター感染症からギランバレー症候群を発症することがあります。
ギランバレー症候群とは、感染などを契機に引き起こされる末梢神経障害です。
症状としては、急速に発症する手足の筋力低下などがあります。
発症する確率は低いとされていますが、完治まで数カ月と長い期間を要し、後遺症を残してしまう可能性も
あります。
予防するには
調理不十分な肉類(大半は鶏肉及びその内臓)からの経口感染が多く、他にもペットや感染者、未殺菌のミルクなど
からも感染します。
また、キャンピロバクターは熱や乾燥に弱いですが、冷蔵庫のような低温湿潤なところでは長時間生存可能なので、
冷蔵庫に保管しているからと安心せず十分な加熱調理が必要となります。
≪予防対策≫
・食品の十分な加熱調理をする。
中心部を75℃以上で1分間以上加熱すること。
・二次感染の防止。
生肉を触った後は、十分な手洗いを行う。
生肉を取り扱う際は、調理器具をほかの食品と別にし、使用後は良く洗浄し、熱湯消毒や乾燥を行う。
・生レバーや鳥刺しなどを食べるのを避ける。
・手洗いうがいを常日頃からこころがける
キャンピロバクター感染症による病気の発症リスクや、つらい症状に悩まないためにも、しっかりと予防対策を
取りましょう。
参考文献:臨床検査学講座 微生物学/臨床微生物学
臨床微生物検査ハンドブック 第4版