第 18回 感染経路について
「感染」は、感染源(病原体に感染している人)から病原体が体内に侵入することで起こります。そして、病原体の侵入経路には様々な種類が存在します。感染を起こす重要な病原体の種類と感染経路はすでに明らかになっているため、感染経路について理解し対策をとることで、感染の広がりを防止することができます。
◎感染経路の種類~どのように感染するのか?~
【飛沫感染】
病原体に感染している人が咳、くしゃみ、会話をしたときに、唾液や痰の細かい粒とともに飛び散ったしぶき(飛沫)を吸い込むことで感染します。飛沫は5μm以上の大きさで、水分を含み落下する速度も速い(30~80㎝/秒)ため、飛び散る範囲は感染源から2m以内程度です。マスクの着用や感染源から距離をとることが有効な対策になります。
《代表的な感染症》
・インフルエンザウイルス
・マイコプラズマ(肺炎)
・百日咳
・風疹(三日はしか)
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) など
《予防方法》
・マスクの着用
・感染源から距離をとる
【空気感染】
病原体に感染している人から出る飛沫核(飛沫の水分が蒸発し、内部の病原体が浮遊したもの)を吸い込むことにより、病原体が体内に侵入して感染します。飛沫核は直径5μm以下でとても小さく軽いため落下する速度も遅く(0.06~1.5㎝/秒)、ホコリとともに空間を浮遊して広い範囲に広がります。
《代表的な感染症》
・麻疹
・水痘
・結核
《予防方法》
・換気
・マスクの着用
【接触感染】
握手などにより病原体に感染している人と直接接触したり、病原体が付着したドアノブや手すり、便座などの表面に接触したあと、その手で目や鼻の粘膜に触れたり食事をすることで、病原体が体内に侵入して感染します。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染やクラミジアのような性行為による感染症も血液や体液、粘膜を通して感染するため接触感染に含まれます。
《代表的な感染症》
・ノロウイルス
・ロタウイルス
・流行性角結膜炎 など
※インフルエンザウイルスなどのように、飛沫感染、接触感染をともに起こす感染症もあります。
《予防方法》
・手洗い
・うがい
・手指消毒
【その他の感染経路】
上記に挙げた代表的な3つの感染経路の他にも、母親から胎児・新生児に、胎盤や母乳などを介して病原体が直接伝播する「垂直感染」や、病原体を保有した動物に咬まれたり、病原体を媒介する蚊・ノミ・ダニなどに刺されたりすることで感染する「経皮感染」などが存在します。
◎最後に
感染経路とその予防法を正しく理解することで、感染のリスクを減らすことができます。また、規則正しい生活をして免疫力を高めることも感染予防、重症化リスクの軽減につながります。日々の生活の中で意識していきましょう。
参考文献
JAMT技術教本シリーズ 臨床微生物検査技術教本 p103-105